ゆうしゅうなひとびと ~いじめ~

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(定義)

 第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

2 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)をいう。

3 この法律において「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいう。

4 この法律において「保護者」とは、親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。

文部科学省 いじめ防止対策推進法(平成25年9月28日)より
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406848.htm

いじめの問題は今や社会問題となっている。

学校内でのこども同士のいじめは暴力的なものから、SNS等を使った陰湿なものまでさまざまである。

しかし、現実には、こども同士の問題だけではなくなる場合もある。

これは、インタビュー形式で繰り広げられる物語である。


第1話 山田 良子


~出会い~

初めまして、わたしは山田良子(やまだりょうこ)といいます。

いじめについてのお話でしたよね。

私もいろんなことがありました。

もちろん、私自身いじめをしたということはないです。

・・・と、思いたいのですが・・・。

え?

気になりますか?

ちょっと長くなりますよ?

・・・わかりました、ではお話ししましょう。

このお話は、私が中学生だった時の話です。

はっきりって、あなたにとって気分の良いものではないかもしれません。

それぐらい、中学生の時には悩みました。

あ、全く楽しくなかったわけではないですよ。

もちろん、運動会や文化祭などはみんなと楽しく進めることができましたし、スキー宿泊学習や修学旅行も楽しくできました。

先生もすごくいい人ばかりで、そこはとても満足しています。

ただ、なんというか、友達に恵まれなかったというか・・・。

そうですね。

ここからは私とある友人についてのお話をさせていただきますね。

あっ、友人の名前ですか?

麻井さきっていう女の子です。

出会ったきっかけからお話ししていきますね。

私と彼女が出会ったのは、中学校に入ってからでした。

それまでは、彼女とは別々の小学校にいたので、どんな子なのかは知りませんでした。

私の小学校はクラスが少なくて、ほとんど知っている子ばかりだったんです。

中学校に入るとクラスがバラバラになり、クラスの中で同じ小学校の子が少ない中での生活となりました。

私、結構人見知りなんですよ。

中学校に入ってから、なかなか友達出来なかったんです。

私って、すごく目つき悪いんです。

眼鏡をしないと文字も見づらいのですが、あまり好きじゃないのでかけていませんでした。

そのせいもあってか、みんなに睨んでると思われていたみたいで・・・。

そうなんです。

仲良くしてくれるのは部活動に入って同じ部に入った子だけなんですけど、クラスが違ったんですよね。

だから、クラスの中では一人でいることが多かったですね。

で、しばらくして、ある日、近くの席の子が消しゴムを落としたんです。

それを拾ったとき、私が持ってる消しゴムと一緒だったんです。

その消しゴムを持っていた相手というのが、みきちゃんでした。

それまではあまり気にしていなかったのですが、消しゴムの話から盛り上がって仲良くなりました。

思えばこれが、中学校に入ってからの悪夢の始まりでしたね・・・・・・。

あっ、すみません!

暗くなるつもりはなかったんですけど・・・。

えっ?

そんなに仲が悪かったのか、ですか?

いえいえ!

一緒に遊んだり、遊びに行ったりしていました。

意外と趣味も合ったりしたので楽しかったですよ。

これは本当です。

さきちゃんに会ったことはわたしにとっては良かったと思っています。

ではなぜ悪夢だったか、ですか?

・・・あまり言いたくはないのですが・・・実は、さきちゃんのお母さんが苦手だったんです。

あ、最初は全然普通だったんです。

でも、さきちゃんと仲良く遊ぶうちに、だんだんとさきちゃんのお母さんが怖くなってきたんです。

え?

ホラー・・・ですか?

いえいえ、そういった類のものではありません。

そうですね・・・当時はわたしもまだ中学生でしたし・・・。

例えて言うならば、威圧感というか圧迫感というか・・・何を言っても無駄というか・・・とにかく、狂暴とか顔が怖いとか、そういうものじゃないんです。

精神的に攻めてくる感じですかね。

異変にはうすうす気がついていました。

あの学校での生活の中でも、いろんな事件がありましたから。

・・・ええ、そうです。

いまだに解決していないんです。

最終的には私がやったのではないかと疑われました。

なぜそう思ったのかはわかりません。

でも、いくら正直に話しても、さきちゃんのお母さんは納得してくれませんでした。

その、3年生で仲が悪くなるまでは、ずっと仲良しの友達だったんです。

~紛失~

え?

どんな事件があったか、ですか?

・・・わかりました、いいでしょう。

いくつかあるのですが、一番は紛失事件ですね。

よくあるじゃないですか。

ものがなくなってしまったとかいういじめ。

あ、いじめかどうかもわからなかったんですけどね。

・・・はい、結局無くなったものは見つかりませんでした。

犯人も誰だかわかりませんでした。

わたしも疑われました。

彼女のものを隠したんじゃないかって。

わたしですか?

そんなことしませんよ!

なんの意味もないじゃないですか。

困らせたかった?

・・・あのですね、まだ言ってませんでしたが、私たちは中学校3年生になるまでずっと仲良しだったんですよ?

事件があったのはその2年前です。

まだ出会って間もない時ですよ?

私だって友達ができて嬉しかったんですから。

いえ、わかっていただければいいんです。

え?

男子が持っていった?

それはあり得ません。絶対に。

だって、さきちゃん嫌われていましたから。

・・・はい、そうですね。

同じ小学校の子たちがたくさんいるのにひとりでいたのはそういう理由だったのかなって後から思いました。

あ、話を戻しますね。

で、まぁ、無くなったものは出てこなかったんですよ。

もちろん、先生たちはクラスや学校中探したみたいです。

学年の保護者の方にも連絡して確認してもらいましたが、ありませんでした。

・・・ええ、警察には出していないです。

無くなったのに?

そうですね。

その辺は私もよくわかりません。

いつの間にかうやむやになっておしまい、です。

先生たちですか?

警察には届けは出していないようですよ。

犯人捜しはしたくない、というさきちゃんのお母さんからの要望ですね。

結局、学年集会をやって、全体で事件があったことを名前を伏せて話しておしまいでした。

・・・そうですね。

誰も出てこなかったですね。

~母~

え?

さきちゃんのお母さんについて、ですか。

わかりました。

当時私が感じたことをそのまま伝えますね。

さきちゃんのお母さんは、学校の先生でした。

どんな先生かって?

よくわかりません。

あまり詳しくは聞いていないですね。

あ、生徒指導の経験があるみたいなことは言っていました。

はい、それはもう厳しい先生だったと自分でおっしゃってました。

そうですね。

私が感じていたのは、脅迫されているような、息が詰まるような、そんな感じでした。

具体的にどんなことをされたのか?

・・・笑わないでくださいね?

・・・・・・ほめられたんです。

あっ、なんですかその驚いた顔は?

えっ?

それでなんで脅迫されているような感覚があったかですか?

・・・そうですね、例えば、「いつも仲良くしてくれてありがとうね。」とか、「さきとお友達になってくれて本当にありがとう。」とか。

え?

普通ですか?

毎回会うたびに言われるのですよ。

一番恐怖を感じたのは、「あなたがいてくれなかったらこの子は生きていけなかったわ。」ですね。

怖くないですか!?

考えすぎかもしれませんが、裏を返せば、ずっと一緒にいてあげてね、と言われているような感じですよね?

私、おかしいですか?

・・・いえ、おかしいんでしょうね。

普通にほめられただけなのに、こんなに勘ぐってしまって・・・。

でも、中学生だった私には、この言葉は恐怖だったんです。

どこにも逃げられないって言われてるみたいで・・・。

とにかく、怖かったんです。

~3年生~

あ、そういえばいじめについての話でしたよね。

そうですね。

これは、3年生になってからすぐの話です。

私、今まで自分のクラスに同じ部活の子と一緒になったことなかったんですよ。

さきちゃんとはずっと一緒だったんですけれどね。

それで、つい嬉しくて、休み時間とかその子のところに行って一緒に話をしたり、遊んだりしていたんです。

で、何時間目かの終わりに私、ふと気が付いたんです。

さきちゃんと話ができていないことに。

私、自分と同じ部活の子が一緒で舞い上がっちゃっていたんでしょうね。

で、次の休み時間に話をしようとしたんです。

そしたら、急によそよそしいというか、私を避けるようになったんです。

係決めとかでも近寄り難い雰囲気で、結局違う子と係になりました。

今までこんなことなかったのに。

そこから私たちの関係はギクシャクし始めました。

私、なんで避けられたのかわからないんですよ。

ええ、ちゃんと「なんかあったの?」って聞きました。

でも、「なんでもないよ。」といいつつ避けるようにするんです。

そこまであってなんでもないわけないじゃないですか。

でも、結局聞けないままでした。

それからは私も避けられてしまうから、部活の友達と一緒にいることが多くなりました。

しばらくそんな日が続いたある日、先生に呼ばれました。

何かあったのかなと思ったら、さきさんのことについてでした。

「最近元気ないみたいだけど何か聞いてるかな?」

そう聞かれたのですが、私もわからないと答えました。

私に悩みがないか、とも聞かれたので私は先生に話すことにしました。

私もここまでの経緯を話しました。

急にギクシャクしたこと。

避けられるようになったこと。

相談したら、「きちんと話をしてみたらどうかな?」と言われました。

確かに、私、あれから一度も連絡とってないんです。

はい、スマホでも「どうしたの?」ってSNSで送って話をしたぐらですね。

学校では話さなかったし、スマホでのやり取りもしなくなってました。

・・・さきちゃんのお母さん、スマホの内容も見てるみたいなんであまり突っ込んだこと言えなかったんです。

・・・怖いですから。

え?

その後ですか?

私から電話をして、最近何かあったのか聞いて仲直りしました。

結局、なんでそうなったのかはわからずじまいでした。

~再び~

しばらくして、また避けられるようになりました。

私は自分が何かしてしまったのかと思って、話しかけるのですが、全然相手にしてもらえませんでした。

ある日、また先生に呼び出されたんです。

それは、さきちゃんが私にいじめられていると言っていたという話でした。

先生はお母さんから連絡があったと言っていました。

私はびっくりしました。

一体私は何をしたんだろうって。

先生も困惑している様子でした。

「お前はそんなことするような奴じゃないと思っているから、話が聞きたい。」

そういわれて、私の悩みをすべて打ち明けました。

~私の悩み~

それはもう、中学校に入って出会ってからのことから全部です。

さきちゃんのお母さんが怖かったこともです。

・・・そうですね、このことについてもう少しお話します。

最初はよかったんですよ?

本当に新しい友達ができて純粋に嬉しかったんです。

小学校の友達は習い事とかで新しい友達のこと知ってたり、すぐに仲良しになったり・・・。

私だけ、友達をつくるのがへたくそだったので、なかなか同じクラスの子となじめなかったんです。

そこに、同じ境遇のさきちゃんと話が合った。

本音で付き合える友達ができたと思っていたんです。

・・・ただ、一緒にいるうちにいろいろとわかってくることもあるんですよ。

たとえば、その家のルールとか、さきちゃんの今までとか。

さきちゃんもスマホ、持ってるんですけど、連絡先に入ってるの家族と私だけなんですよ。

スマホの中身もお母さんが見ているみたいでした。

私は本音でSNSで話をするのが怖くなりました。

あとは、さきちゃん、なんでもお母さんに相談したり話したりするんです。

・・・普通ですか?

確かに普通かもしれません。

でも、何か物事を決める時もお母さんに聞くんです。

許可を求めるんです。

そして、お母さんが言うことは絶対なんです。

・・・それが普通ですかね?

私がおかしいんでしょうか。

・・・話を進めますね。

小学生の時の話も聞きました。

小学校でいじめにあったこと。

その時にお母さんが先生や教育委員会に話に行ってくれたこと。

それこそお互い本当に何でも話していました。

でもあるとき、私、聞いちゃったんです。

クラス替えの時、常に一緒だったのは、校長先生に直談判していたからだったこと。

最初からそうなるようになってたんですね。

そのこともさきちゃんに聞きました。

そしたら、「先生たちは私たちに逆らえない。」、そう言っていたんです。

それ以来、私は気を使いながら生活していました。

言いたいこともあったけれど、その言葉を飲み込んだ時もありました。

さきちゃんはいろいろ本音をぶつけてくるけれども、私は後ろにお母さんがいると思うと怖くて言えませんでした。

・・・私の悩みはこんなところです。

~悪夢~

とにかく、悩みも先生に伝えました。

私の両親もこの件については気が気じゃないらしく、相談していたみたいです。

・・・実は、さきちゃんのお母さんから連絡が来てたんです。母に。

そしたら、学校でうちの子がいじめられているとか、お宅の娘にきちんと指導してくださいとかいろいろ言われたみたいです。

どうしたらいいのかわからなくなって学校に相談したようです。

それからしばらくは、さきちゃんとの関りを持たずに生活していました。

数日後、また呼び出しをされました。

・・・ああ、呼び出しといっても、嫌な感じじゃないんです。

もう事情を把握していて、こんな感じだとか、こうしたけどどうかなとか。

そんな話でした。

先生たちも、どんな事情でこうなったのかを詳しく知りたいらしく、困った様子でいろいろ聞いてきました。

あらゆる可能性についても話をしました。

私の話し方で相手の心を傷つけてしまったのではないか。

睨んでいるように思われてしまったのではないか。

そして、最終的に私はさきちゃんの気持ちを傷つけてしまったのではないかと思い、謝ることにしました。

・・・ふふっ、変ですよね。

私、何をしたのか自覚ないんですよ?

それを謝らなくてはいけないなんて。

でも、結局謝れなかったんです。

なぜ?

本当に私が反省しているかわからないから、です。

両親もだいぶ悩んでいました。

私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

両親にも、先生たちにも、そして、無自覚にいじめてしまったであろうさきちゃんにも。

~手紙~

それからですか?

私は反省の気持ちを伝えるために、そして、これまで心の中にとどめていた思いを手紙にして渡すことになりました。

反省文、という形ではありましたが、私の気持ちをわかってもらいたいと思い、先生に話したことと同様に手紙を書きました。

平日だけじゃ書けなかったので、休みの日も学校に行って書きました。

辛かった?

そうですね・・・でもこれで終わるんだと思っていたので、頑張って書きました。

正直な気持ちを。

先生たちにも見せて、文章の変なところを直しました。

校長先生にも見てもらったらしく、反省文なのに本音が多くて反省している様子がないということで書き直しになりました。

休みの日も合わせて1週間、手紙を考えて書きました。

直した手紙の内容は、謝罪とこれからについて、そして、お母さんがずっと怖かったことを書きました。

そして、手紙を渡してもらったんです。

その手紙、その日のうちにそのまま返ってきました。

さきちゃんとさきちゃんのお母さんに見てもらったらしいのですが、謝罪の気持ちが全く伝わらないとのことで返されたらしいです。

・・・先生達を恨んでいるかですか?

いいえ。

私と同じぐらい時間を割いて一緒に考えてくれていました。

そんな先生たちを恨むことなんてできません。

でも、この手紙で終われなかった私は卒業までこのままだと覚悟しました。

~その後~

その後ですか?

大変でしたよ。

まず、担当してくれていた先生が失踪してしまったんです。

・・・私のせいですかね?

本当に申し訳なかったと思っています。

どうやら見つかったという話でしたが、その後、私たちの前には姿を見せませんでした。

学校生活ですか?

私はひっそりと生活してました。

できるだけ笑わず。

友達とも関わらないようにして。

もちろん、さきさんとは極力接触しないようにしました。

そんな毎日です。

でも、楽しくなかったわけではないです。

運動会も文化祭もみんなで作り上げました。

もちろん、受験も集中してやりました。

多少窮屈ではありましたけどね。

私がいなければ、こんなことにはならなかったんですかね?

結局、何がいじめだったのか、いじめの原因は何だったのか、私にもわからずじまいです。

振り回されただけって感じです。

・・・はい、これが私のいじめの話です。

何か参考になりましたか?

そうですか、良かったです。

それでは、本日はありがとうございました。

いえ、すこしでもお役に立てて本当に良かったです。

いじめ、無くなるといいですね。

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